カオス

 人間の知の営み全てが、カオスから切り取るということをしている。その切り取る手段は時に言語であり、時に数式である。カオスはカオスのままでは知とならない。言語や数式という枠組みに落とし込むことにより、知となる。これは、その枠組みからこぼれ落ちるものが必ずあるということも意味する。

 物理学においても、ニュートン物理学から量子力学へと発展の歴史を経て、多くの知を積み重ねてきた。人間は現実をすべて理解できたつもりでいるかもしれない。しかし、それは大きな間違いである。人間が理解しているのは自然という壮大な営みのほんの一部にすぎない。必ず量子力学の後の、何か壮大な理論を生み出すような下地が備わっている。我々がまだ気づいていないだけである。そしてそれは遠い宇宙の果てで起こっているわけではない。今目の前で我々がまだ知らない物理現象が起きている。ニュートン物理学の時代にも、量子力学的現象が起きていたのと同じように。