AIは嘘をつくか

 昨今、人工知能(AI)についての話題が絶えないが、人工知能の水準がより上がっていったときに、人工知能が嘘をつくという事態は起こりうるのだろうか。それを考えるためには、まず嘘をつくということがどういうことなのかを考えてみる必要がある。
 「嘘」が成立する状況を考えてみると、主体が、ある命題を真実だと認識しているにもかかわらず、何らかの意図により、別の命題を相手に伝えるというときに、嘘は成立する。その意図というのはいいときもあれば、悪いときもあるだろう。しかし、少なくとも何らかの意図は必要なのである。したがって、嘘が成立するためには、嘘をつく主体に意図があることが前提となるわけである。となると、この問題は、「人工知能が何らかの意図を持つことは可能か」というもの還元されるだろう。
 また、人工知能が、何の意図もなく、別の命題を伝えてしまった場合は、嘘ではなく誤作動と呼ばれるだろう。それを人間が後から勝手に嘘をついたと解釈することがあったとしても、それは本質的な嘘ではないということになる