言葉を発するということについて

 人が言葉を発するとき、それは色々な場面が考えられる。会話の場面など、複数の人間がいる時に言葉を発することがまず考えられる。また、一人の時でも、独り言ということばがあるように、言葉を発することがある。
 まず、会話の場面における発言について考えてみたい。このようなとき、発言に対する通常のイメージは、ある主体の心の中に言葉が浮かび、それを相手に伝達するというものである。だが、人間は心に浮かんだことをすべて発言するわけではない。まず自分の心に浮かんだ言葉ないしはイメージについて、その場にふさわしい言葉か、相手に嫌な思いはさせないか、自分が非難されないだろうか、というようなことを考え、自分の中で取捨選択したうえで、発言するだろう。つまり、会話の場面において人が発する言葉は予めスクリーニングされたものになるということである。(続く)